
皆さんは、一九八一年の冬の夜を覚えていますか。日本武道館のステージから、一人のギタリストが空高く舞い上がった瞬間のあの衝撃です。ギターを弾きながら宙を舞うなんて、当時の私たちには魔法のように見えました。その中心にいたのが、稀代のギタリスト、高中正義です。彼の奏でる陽気で色彩豊かなメロディは、停滞気味だった日常をカラフルに塗り替えてくれました。
高中正義といえば、やはりあの虹色のギターです。当時、レコード店に並ぶ彼のアルバムを手に取った時のワクワク感は今も忘れられません。サディスティック・ミカ・バンドでその才能を知らしめた彼が、ソロとなってからの活躍はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いでした。シティポップの先駆けともいえる洗練されたサウンドは、カセットテープにダビングして、夏のドライブの定番としていつも持ち歩いていましたよね。
あの頃、六本木や赤坂の街は夜通し輝いていました。深夜放送のラジオから流れる高中正義のギターサウンドは、都会の風のような爽快感と、どこか異国を感じさせる優雅さがありました。重厚なロックも素敵ですが、彼のギターはもっと自由で、聴いているだけで海辺の景色が浮かんでくるような不思議な力があったのです。
しかし、華やかな成功の裏側には、想像を超える重圧や孤独もあったはずです。武道館で空を飛ぶという演出一つとっても、どれほどの準備とリスクがあったことでしょう。当時の週刊誌を賑わせた数々のスターたちのように、高中正義もまた、常に音楽の最前線で自分を試し続けていたのだと感じます。常に新しい音を追い求め、観客を驚かせ続けるその姿勢は、職人という言葉がぴったりです。
あれから長い月日が流れました。今、改めてレコード盤に針を落としてみると、高中正義の音色が変わらず新鮮に響くことに驚かされます。ウォークマンで聴いていたあの夏の空気、夕暮れの街並み、そしてあの虹色のギターが教えてくれた自由な心。昭和の音楽シーンには、まだまだ語り尽くせない物語がたくさん眠っています。
皆さんも久しぶりに、高中正義のアルバムを聴いてみませんか。きっとあの頃の自分と、今の自分が不思議と重なり合うはずです。これからも、私たちの心に刻まれた大切な名曲やアーティストの物語を、ここで一緒に振り返っていきましょう。次回の更新も楽しみにしていてくださいね。